2020/11/08 07:00
薔薇の香り、と言われて、すぐに薔薇の香りを思い出せるでしょうか。その香りは古くから人々を魅了してきました。古代メソポタミアには墓に手向けられる花として重宝され、花といえば薔薇、その薔薇を持つ女神像と、神話のモチーフにもされているほど人気の薔薇。
かのクレオパトラやマリー・アントワネット、ナポレオンの妃ジョセフィーヌに愛され、その種類を増やし、世界を魅了してきたのです。見た目の美しさだけでなく、その香りが愛されてきたのは言うまでもありません。
香りの薔薇といえば、中世期トルコによる支配によって栽培され始めた香り高いブルガリアンローズが、世界的に有名です。農薬を使わないオーガニックで栽培されるので、口に入れても大丈夫。区画を区切って栽培され、虫が発生するとその区画は焼き払ってしまうそうです。それ以外にもさまざまに手間暇をかけて、大事に育てられ、4t収穫した薔薇から抽出できる精油は、わずか1kg。当然、高額になります。贅沢に育てたダマスクローズから、エレガントな香りをつくりだしています。
このローズオイル、単に香りやつくりが贅沢で高価なもの、というだけではありません。
食材としても重宝。薔薇のエディブルフラワーも、最近はよく目にするようになりました。スイーツに散らしたり、サラダに散らしたり、薔薇の花びらや薔薇を利用したシロップやソースなどは、料理の見た目を華やかにしてくれるものです。
ローズポリフェノールというポリフェノールは抗酸化力に優れており、アンチエイジングにも期待大。ビタミンCも豊富なので、花びらを食するというのも良さそうです。
日本では、世界で初めて全身麻酔による外科手術(乳がん)を成功させている花岡青洲の家に、ローズウォーター精製方法が伝わっていたそうで、傷口の消毒や口腔内の処置に活用されていたとか。
最新の研究では殺菌、空気清浄、リラックス、向上心、ホルモンバランスと幅広い分野での科学的証明がされてきているという薔薇の香り。
淡いピンク色の薔薇は、色彩的にも若返りの効果があると言われています。日本では、バラ科の桜こそ、若返りの効果があるという研究のある花。そういわれてみれば、まんざらでもないような気がしますね。
薔薇の花に囲まれて眠る、というのも、単なるロマンチックなセンチメンタリズムとは、言えないようです。
(文・Natsuo Yoshida/画・rose015 by Photo AC)